業績を優先して社員同士を競争させると・・・

 経営者としては、業績を伸ばすために社員をどうにかして動機づけしたいところです。社内に競争原理を働かせてみようか、と考えることもあるでしょう。しかし、時にはそれが思いもよらぬ結果として、社内の雰囲気を険悪にしてしまうことがあります。

 

 たとえば、社内でチーム(営業チームや施工班など)をつくって仕事をしているような場合を考えてみます。それまでは、それぞれのチームが別々に活動をして、他のチームと比較されることもないような状況で仕事をしていたとします。しかし、ある日突然、社長の思い付きで成果主義を導入して、チーム間に競争原理を働かせてみることにしました。やがて、社内は険悪なムードに包まれ始めます。なぜ、そのようなことが起きてしまうのでしょうか?

人は自分のチームを高く評価しがち?(内集団ひいき)

 人は自分が所属している集団(チーム)を実際よりも高く評価(ひいき目に見て)しまいがちです。このような現象を社会心理学では、「内集団ひいき」と言います。自分が所属している集団をひいきしてしまうため、その反動で他の集団に対して敵意を抱いてしまうことがあります。

 

 社会学者のムザファー・シェリフは、集団の対立問題を研究するために、ある実験を行いました。その実験では、夏休みにキャンプを行うとして、お互いに初対面の少年たちが集められました。実験は次のような流れで進められます。

@少年たちは、2つのチーム(集団)に分けられて、別々の場所で生活します。この時点では、少年たちは別の場所に他のチームがいることを知りません。生活をしていくうちに、チーム内の少年たちの間には仲間意識が芽生え始めます。

 

A少年たちにとって魅力的なモノを報酬として用意します。勝った方にだけ報酬を与えることにして、2つのチームを競争させます。

 

Bチーム同士の敵意が増加して、チーム間で争いが生じるようになりました。

 この実験から言えることは、これまでは別々に活動していたチームが、ある時から一緒になって競い合うと敵対関係になってしまうということです。M&Aなどで複数の企業が1つに合併したような場合にも、以前の会社の社員同士がチーム(部門や派閥など)となって、このようなことが起きるかもしれません。いったいどうしたら、このような敵対関係を解消することができるのでしょうか?

チーム間の敵対関係を解消するには?

 先ほどのシェリフの実験では、レクリエーションなどにより2つのチームが一緒に過ごす時間を増やしてみたところ、お互いの敵対心は消えなかったそうです。単なる飲み会や社員旅行などでのコミュニケーションでは対立関係の解消にはならないようですね。

 

 一方で両チームが協力し合わなければ食料の調達ができないような状況になると、自然とお互いが協力し合い、両チームの間に仲間意識が生まれるそうです。成果主義は競争だけの場になりがちですが、全チームに共通の目標を与えることで、他のチームは敵ではなく味方であるという感覚を持つことが大切なのかもしれません。社員がみんな同じ方向を見ながら働いていれば、ぶつかり合うことも少ないのでしょう。

 

 京セラの創業者である稲盛和夫氏が提唱しているアメーバ経営は、独立採算制でありながら全従業員の力を集結することで有名な経営手法です。社内にアメーバと呼ばれる小集団組織をつくり、そのアメーバが独立して採算を管理します。稲盛氏は「アメーバ経営」の中で、こう言っています。

 

“ときには競争することがあっても、アメーバはお互いに尊重し、助け合わなければ、会社全体としての力を発揮することはできない。そのためには、会社のトップからアメーバの構成員に至るまで、信頼という絆で結ばれていることが前提となる。”

稲盛和夫「アメーバ経営」(日本経済新聞出版社)

 

 社員同士が常に競争している職場より、仲間として助け合う職場のほうが心地良いですよね。競争ではなく協力の雰囲気が会社内にあると、自分は信頼できる人たちに囲まれているのだと思えるようになります。人の心は他者との関係の中でつくられていくと言えるのではないでしょうか。自分も周りの仲間もお互いに影響し合って心がつくられるということです。仲間同士が助け合うような心地良い雰囲気は、もしかすると、非公式なミーティングの場にあるのかもしれません。

社会心理学で他者からの影響を知る

 人は、社会・集団の中にいると、一人でいる時にはしないような行動をすることがあります。知らず知らずのうちに、周りの人からの影響を受けてしまうです。人の目を気にしたり、長いものに巻かれてしまったり、仲間がいることで気が大きくなってしまったり、買いたくもないモノをつい買ってしまったりと、そのような経験はありませんか?後になって、よ〜く考えてみると、自分の本当の気持ちとは違う行動をとってしまったことってありますよね。社会心理学を知ることで、人はどのような状況になると自分の気持ちとは違った態度をとってしまうのかを知ることができます。社会心理学を知ったからといって、すぐに自分の態度を変えられるものではありませんが、少しだけ世の中の見方が変わるかもしれません。

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